佐藤惣之助全集
澤 正宏 解説
全3巻・A5判・上製・総約1,000頁
本体:45,000円+税
4-284-70012-X NDC 918.68
2006年1月刊

〈底本〉
『佐藤惣之助全集』 全3巻(昭和18年 櫻井書店)

< 特色>

●生涯に20数冊の詩集のほか、多くの随筆集・ 句集を遺した惣之助の唯一の全集を復刻!

●室生犀星の編集・校閲による豪華版!

●復刻版刊行に当たり、新たに解説を第3巻 巻末に付す。

●著者は、阪神タイガースの歌「六甲おろし」 や「赤城の子守唄」「湖畔の宿」「人生劇場」など多数の歌謡曲の作詞者としても 著名!


< 各巻内容>

第1巻 詩集・上
朝紅/わたつみの歌/怒れる神/トランシット/情艶詩集/颶風の眼/華やかな散歩/荒野の娘/深紅の人/満月の川

第2巻 詩集・下
正義の兜

第3巻 随筆篇
釣の探求/水中の春/沖縄の風色/花猫遊草/枯野の王者/彼女は帰れり/野外手帖/薩摩/美しき寺/洗耳記/月に就いて/花と葉と/ほか三九篇を収録

【解説】 澤 正宏(福島大学教授)


『佐藤惣之助全集』復刻版の刊行によせて 澤 正宏(福島大学教授)

「私の行き方は万事 willだ」(詩集『荒野の娘』大正11年)、「私は円熟の敵だ」(詩集『雪に書く』大正12年)と佐藤惣之助は述べたが、大正期の近代詩人として出発した惣之助は、やがて怒涛のように欧米の新しい詩が押し寄せて来たときにも、過去に到達した詩の言葉を固守するのではなく、常に意志的に古い詩からの脱却を様々に試み、昭和期の現代詩人として詩の想像に賭けていった。この意味では、高村光太郎の「詩魔に憑かれた魔性の詩人」という惣之助の見方は的確であろう。第一詩集『正義の兜』(大正5年)には惣之助の最も基本的な詩想としての、理想的な自由主義、人道主義を内容とする生命主義が表現されたが、ここへ感覚的表現、東洋的な虚無感、方法的な言語実験などを付加しながら、モダニズムとしての現代詩へと鮮やかに変貌していった表現は、小林秀雄がいうように「甚だ愉快」という地点にまで昭和の詩を引き上げた。このことは、惣之助の新しい詩観が、彼が主宰した詩誌『詩之家』によって、当時、主流であった『詩と詩論』とは別系統のモダニズムを既に育てていた事実からも証明できよう。「赤城の子守唄」「人生の並木道」など、晩年の大衆の方を向いた詞への更なる変貌を含めて、この度の三巻本の全集の復刻が、佐藤惣之助の再評価の機会となることを強く願うものである。
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