広田照幸
(日本大学教授)

尾木直樹(教育評論家・法政大学教授)
苅谷剛彦(東京大学教授)
佐藤 学(東京大学教授)

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「学力問題・ゆとり教育」に関する膨大な議論を、研究者のみならずジャーナリズムにおける言説も交えて収録。「学力論争とは何か」「ゆとり教育とは何か」を多様なレベルから検証し、その議論の展開と教育改革の行方を示す!

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「格差」や「二極化」が叫ばれる現代日本の状況を踏まえ、それを生み出すメカニズムとしての「学歴」の効用や、その取得をめぐる「受験競争」の実態を明らかにする90年代以降の諸論考を精選。教育と社会的地位との関連をめぐる混迷や閉塞を解き、明らかにする、新たな挑戦!

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ハウツー本などの技術的アプローチ、特定のイデオロギーや規範からの現状批判に終始しがちな「子育て・しつけ」というテーマに対して、現状を的確に捉えた諸論考を精選。「家族そのものの変化」など、そこに内在する問題、さらに教師・親・行政といった「担い手」の役割を問い直す!

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教基法「改正」問題、ことに近年の議論に焦点をあて、「いま・ここ」から教育基本法を考える論考群を精選!「改正」推進、「改正不要論」の擁護、さらに「改正当面不要論」にいたる議論を網羅。錯綜する言説を整理し、教基法のアポリアに迫る!

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戦時・戦後教育における愛国心・国家主義の問題や近年、政府・財界から出された愛国心・国家主義教育についての文書、冷戦崩壊後のグローバル化のなかで台頭した新国家主義の問題など、多方面からアプローチした論考を厳選!

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半世紀以上にわたり日本で議論され、ここ数十年は韓国や中国も巻き込んで、強い関心が寄せられるようになった「歴史教科書問題」について、現在の諸問題から、家永裁判を初めとする 「戦後」の教科書論争、近隣の韓国・中国での教科書の制度と内容、その背後にある歴史観を知るための論考などを収録!

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教育現場・子育てのなかで直面する「子どもと性」について、現状を理解するうえで不可欠な諸論文を収録。「子どもの性行動・ 性意識」「性の多様性」「性教育の理論と実践」など、それぞれの分野における問題を整理し分析を試みる!

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「いじめ」「不登校」という現象に対して行われてきたアプローチについて、原因やメカニズムの検討、いじめの言説の分析、不登校と学校教育の変容の検討、問題への「対策」や取組みなどに関連する諸論考を精選。各論文からその変遷と現状を整理し、今後の行方を探る!

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「非行」「少年犯罪」を理論的な解釈方法、その問題を取り巻くメディアや学校をめぐる実態から、そこに関わる「少年法」などのシステム構築まで、多角的な視点から論文を精選。それぞれの視点を体系化することにより、「問題」の現状を整理し、今後の課題を浮き彫りにする!

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子どもにとってメディアが危険であるという議論とメディアが開く未来という議論とのニ項図式的な対立構図を相対化し、「子どもとニューメディア」の関係をめぐる複雑でダイナミックな議論の可能性を拓く諸論考を精選。

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 近年のデータベースの整備等により、教育の諸問題に関わる研究の情報も、その入手はきわめて容易になった。しかし、その一方で、大量の論文が生産されるようになってきた結果、主要なキイ・ワードに対するヒット件数があまりに膨大になり、かえって情報の大海の中で方向がわからなくなるという事態も生じている。「知」の世界の広がりを見通すのがなかなか難しい時代である。
 そうした中で、学部学生・大学院生や、教員をはじめとする教育関係者の方々などに、特定主題に関する学問の広がりや深まりをコンパクトに伝えたいというのが、本リーディングスの大きなねらいである。
 教育の諸問題は、現象の考察・分析をおざなりにして「どうするべきか」を性急に問うと、視野が狭い一面的な対応に陥りやすい。教育に関する日常の常識は、誤謬や偏見をたっぷりと抱え込んでしまいがちだからである。特に、社会的視点が欠落した教育論にそれが強い。まずは、「何が起きているのか」「現象をどうみるべきか」「どの側面からその事態を考えていけばよいのか」について、社会的視点をふまえて掘り下げる必要がある。
 教育と社会の関係は、教育が社会の変化に影響を与える側面、社会が教育のあり方に影響を与える側面、教育の場や関係が一つの社会的なものとして存立している側面など、多面的である。本リーディングスは、そうしたさまざまな面をあつかった、すぐれた論文を集めて収録した。
 実証的な社会科学的手法が隠れた構造や機能を明るみに出すこともある。深い思想的な洞察が、現象の背後の本質をつかまえることもある。歴史的な視点や比較という視点が、目の前の現象に固有な特徴を浮き彫りにすることもある。このような教育研究の「知」の世界の広がりが多くの方に理解され、さまざまな現象がそのレベルからとらえ直された時、教育問題をめぐる議論は、より視野が広くバランスがとれたものになるはずである。
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 今日の教育界は、かつて経験したことのない程混迷と矛盾を深めている。
 少年による凶悪事件が連続すると、少年をバッシングし、親の責任を問う。学校では「教育の構造改革」の名の下に、「学力の向上」をテコにしたエリート教育や教育の差別化が教育条理を無視し、市場主義原理に乗って進む。21世紀を切り拓くにふさわしい「地球市民の育成」の視点など片鱗も見られない。PTAからは「挨拶カレンダー」が各家庭に配布され、計算の「反復ドリル」や「早寝・早起・朝ご飯」運動が推奨される。
 どんな学力かを問うこともなく、授業時数を一時間でも増やし、全国一斉テストで競わせれば、学力が伸びると信じているようだ。
 子どもの尊厳を守り、学校や地域づくりに参画させる気もないのに、ペナルティだけは強化し個人責任を問う。
 今日の大人社会は、次世代の子どもたちを成長させる広やかな心構えもその力量も喪失したのではないか。
 そんな絶望的な折も折、本シリーズは子どもに寄り添いながら現象の深層に分け入ろうとしている。社会的・歴史的視点から事の本質を分析しようとしている。同時にどうすべきか、総合的・科学的展望をも力強く提示している。
 なんとタイムリーな企画であることか。
 必ずや今日の教育の混迷を解き明かし、明日への希望をつむぎ出してくれるに違いない。是非、揃えたいシリーズである。
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 日本の教育の論じ方が変わろうとしている。かつては、高く掲げられた理想的な視点から、現実の教育の問題点をたたく「べき論」や、個別の経験や印象に基づく体験的教育論が幅をきかせていた。マスコミに代表されるような、型どおりの見方に凝り固まった教育批判もあふれていた。
 ところが、近年、教育の実態を正確に捉え、さらには教育を取り巻くさまざまな環境との関係をしっかりふまえなければ、どんな理想論も教育批判も地に足のついた議論にはならない、そういう見方が、少しずつだが、社会で受け入れられるようになってきた。一言で言えば、実証性を重んじる社会科学的な教育研究である。今回発刊となる『リーディングス・日本の教育と社会』は、そうした新しい教育研究の宝庫である。
 各巻に収められた論考は、いずれも第一線で活躍する教育の社会科学者たちの手による。取り上げられるテーマも、現在、そして近未来の教育を考える上で、喫緊の課題に応えるものばかりだ。実証的な研究の集大成だけに、重要なデータも満載である。先端的な分析方法や理論的な背景を学ぶこともできる。大学教育の場ではもちろんのこと、広く一般の読者にとっても、教育問題への社会科学的アプローチを学ぶ絶好のテキストなのである。
 あなたも、教育を社会科学的に考えてみませんか。その扉が、このシリーズによって開かれようとしている。
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 「教育問題」がこれほど人々の関心を集めているのは、おそらく、問題の一つひとつが現代日本の社会が抱え込む深部の問題と直結しているからだろう。しかし、「教育問題」は、人々の関心が強いだけに、そして誰もが一家言を持っているだけに、それぞれの印象によって表層的に語られがちであり、その本質や深層が究明されないまま、マスメディアの市場において「ブーム」として浮沈し消費されがちである。現代日本の「教育問題」を20のテーマに整理し、それぞれのテーマに関する最近10年間の重要な論文を解題付きで編集したこのシリーズは、とかく表層的に語られがちな「教育問題」の深層を読み解く洗練されたアンソロジーである。
 このシリーズの魅力は、誰もが関心を寄せる「教育問題」を、現代日本の社会構造の変化と結びつけて「問題」の現象の布置を明らかにし、その社会的・歴史的意味を解読している点にある。「教育問題」の今を読み解くことは、明日の社会への展望を読み解くことに直結している。大学の講義やゼミナールの参考資料として、市民の研究会のテキストとして、さらには「教育問題」を報道するジャーナリストの必読文献として、本シリーズが一人でも多くの人々によって活用されることを期待したい。
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